ということで、登壇者フィードバックが見えるようになったので、フィードバックなどでもらっていた質問や感想に勝手に答えながら、発表内容について振り返っていこうと思います。なお、この記事は基本的にフィードバックを引用していくことになりますが、「登壇された方のみが fortee で見られる」という性質上、全文を引用することはなく、部分部分を引用していくことにします。

あと、実はn13uさんのtechRAMEN非公式合宿でブログ書きます!と言ったのですが全く進んでいなかったため、この記事を書いて登壇ブログとすることでブログ執筆のノルマを達成しようという狙いもあります。割とマジでこれで勘弁してもらえませんか?

はじめに

まず、発表に来ていただいた方はありがとうございました。
「多忙な学生はどう個人開発と向き合うか?~「タスク多め・腰重め・進捗少なめ」なあなたに~」というタイトルで20分間のトークをさせていただきました。Yourein (ゆれいん) といいます。
思ったよりもたくさんの方に発表を聞いていただき、さらにフィードバックも頂くことができて嬉しい限りです。地方の謎カンファレンス第一回かつ、大学入学から大変お世話になっている方が実行委員長をされているということで、第一回を飾れるような内容を意識してスライド構成や話の展開を練りました。個人的には少し心残りな部分もあるのですが、概ね好評で良かったです。1 この記事を読んでいる方の中にはトークを聞いていなかった方もいらっしゃると思いますので、以下に登壇資料をembedで入れておきます。

とはいえ、発表資料を眺めてもらうのもあれなので、適当に概要を説明すると、

  • 世の中はタスクを片付けるために元気やモチベーションに頼りすぎている
    • 普通は常にモチベーションに溢れているなんてないよねという仮定をしてみる
  • 人は今週、今日、今やるべきタスクに集中すべきである
    • 期間を広げて多くのタスクを認識しても、人間はそれを覚えていられないし、認知しきれない
    • Divide and Conquer
  • モチベーションがない状態でタスクに向かうために条件付けを利用してみるのはどうか?
  • Youreinはこれらの個人的考察から「負債返却アワー」という仕組みを行っている
    • Googleカレンダーに3 ~ 4時間程度の予定を設定し、予定の説明にその時間にやるタスクのリスト(高々2, 3個程度)を書く
    • 最初のうちは強めに意思をもったり、その時間の別の予定を断るなどして向き合う姿勢を作る
    • Googleカレンダーからの通知を条件刺激とするように意識する

というような発表です。

それでは、いくつかフィードバックのコメントを見ながら発表を振り返っていくことにします。

フィードバックについて

何か、発表内容に関連する研究などのバックグラウンドなどはあるのでしょうか?

自分がそういう研究をしているとかいうバックグラウンドは無いのですが、知識を得る機会があったというのはそうだと思います。

自分が所属する大学、公立はこだて未来大学は一部に先鋭的なカリキュラムを取り入れており、1学部2学科4コースの中で3コースの学生全員が認知心理学に関する基礎的な講義と実験科目を履修する必要があります (といっても、自分は当該科目を履修しなくても良い1コースの例外に所属しており、みんなが認知科学をやっている間自分は物理実験をしたり数値シミュレーションをしていたのですが…)。
さらに、未来大はかなり実学的なヒューマンコンピューターインタラクションの授業があり、人間の認知特性に注目しながらヒューマンインターフェースの構成などを考える授業など、認知科学、認知心理学に重きをおいた授業が4年間のなかでしばしば開講されていると感じます。 (といっても、やっぱり自分はその授業が必修じゃないコースなのですが…)

このフィードバックコメントの中には、「何かそういうバックグラウンドがあるなら自己紹介のときに強調しておいても良かったのでは?」という意見があったのですが、これをしなかったのは、自分が認知科学及び心理学エアプだからです。確かに認知科学や心理学は自分の興味分野ではあるのですが、専門分野ではなく、その分理論や基礎知識への理解が浅いと感じています。このような経緯があって、スライドの始めあたりに「本発表はあくまでも一個人の経験の上に語られるものです」とか「バックグラウンドに統計的に有意な手法があるわけではありません」などの注意書きをしていたわけですね。2

また、負債返却アワーというのはぽっと出のものではなく、形は大幅にかわったものの、実在する別のメソッドから着想を得たものでした。
函館ゆるすぎる勉強会 2(ツー)」という私が主催する勉強会で少し話したのですが、ウォンテッドリー株式会社が導入している「負債返済日」という仕組みに影響を強く受けたものになります。「負債返済日」については、「負債返済日の取り組み | dev-branding@wantedly.com」のTL;DRを参照してほしいです。
このメソッドの存在については、私が学部1年生のときにウォンテッドリー株式会社さんにインターン生としてお世話になったこと、そのときのメンターの方が負債返済日の成果(下記参照 3)についてXでつぶやいていたりしたのを見て知っていました。

このメソッドのように、普段できていないがやるべき、やったほうがいいことを仕組みで解消していくのが良いなと思ったのが負債返却アワーの誕生に関わっています。とはいえ、前述の通り負債返却アワーは負債返済日とは大きく異なる形をとっています。これは実際に負債返済日を真似たものを導入し自分で試してみたあとに、発表で話したような要素を組み合わせて現在の形、発表した負債返却アワーの形に収束していったという話だったりします。

Youreinさんは自分を見つめるということにすごく自然に取り組んでいるように思いました

これは鋭い視点だなと思いました。
確かに、同期にも似たようなことを言われたり、言語化の能力が高いと言われることがあります。

自分の好きなブロガーの一人にRikuoh (@riq0h)さんという方がいらっしゃって、その方の「書くやつは傲慢、書き上げないやつはもっと傲慢」という記事に好きな一節があるので引用します。


(前略…)ところが、そんなご時世にあってもわざわざ長文を書くやつがいる。ブロガー、エッセイスト、小説家、物書き。肩書きはなんでも構わないが、いずれにしてもとんでもない連中である。せっかく言語から頭と骨と腸を抜き、小綺麗で美しいパッケージに包んでデザインせしめたこの時代に、あえて硬く筋張った臭みを味わわせるつもりでいる。

文章は長ければ長いほど個人の痕跡を残す。思考の過程が刻まれる。多くを語らなければ曖昧でいられた部分が、隠しきれない粗として露呈する。誰も見ていないようで誰かが見ているインターネットの世界において、そうした行為が半ば自傷癖や露出狂の一群に分類されることにもはや疑いの余地はない。

それでもなぜか書かずにはいられない。インターネット上に公開して、あわよくば読んでもらおうとさえ画策する。目をそむけたくなる汚い粗や、鼻をつまみたくなる臓腑の臭いも、まるごと受け入れられるつもりでいる。未来の自分の眼差しでさえ恐ろしいのに、他人の目にも裸体を曝け出して平然としている。物書きに勝る傲慢な人種はそういそうにはない。


このYourein's Desktop.iniというブログは自分が大学に入学する少し前に作られたサイトなので、大体3年くらいの歴史があります。しかし、自分がブログという媒体に記事を書く側の人間として初めて触れたのは中学生の頃。〇〇日記のような特定のサービスに付随するような文章投稿サービスも含めるとこういった 痛い自分語り を小学生の頃から続けていることになります。

誰も見ていないようで誰かが見ているインターネットの世界において、そうした行為が半ば自傷癖や露出狂の一群に分類されることにもはや疑いの余地はない。それでもなぜか書かずにはいられない。

自分は本当にこの文章を地で行く人間なわけです。4自分の頭の中の有象無象を表現可能な形に希釈し、スパイスを乗せた上で文章なりスライドなり文字にまとめて他人に自己の思考をひけらかす。自分は最早その快楽から逃れられない。そんな人間が曲りなりにも大学生になった結果、以下のような思想を得たわけです。

これは「言語化出来ないものは認知できない」という自分の信念や思想から来たもので、… (本を読んでいます より引用)

当時の自分は―まあ今もそうといえばそうなのですが―サピア=ウォーフの仮説とか論考とか言語論的転回に強く影響を受けていて、いわゆる「語りえぬもの」の存在に直面するまで、自身の言語の限界を広げたいという思考があったのです。56

話はフィードバックに戻りますが、そういう経緯もあって、確かに自分は自分を見つめるということ、今の自分の言語で表現できるレベルで標本化する、まあ言ってしまえばメタ認知なわけですが、そういう能力値が他の人より高いとかはあるかもしれません。7

負債返却アワー、導入してみようと思います

実際に導入してみた例なども耳に入っており、本当にありがとうございますという感じです。
発表の終わりにも言いましたが、必ずしも負債返却アワーがあなたの生活ルーティーンに合致するかというとそれはまた別の問題で、私のものをベースにしたり、それこそウォンテッドリー株式会社の負債返済日や別の会社の似たようなメソッドを参照して、好きなようにカスタマイズするのが良いと思います。

フィードバックではないですが…

フィードバックではないですが、発表後にセッションの合間や懇親会で話しかけてくれた方が何人かいらっしゃいました。自分はなかなかに内向的な人間で、懇親会の大半の時間は本を読んでいたくらいに自分から人に話しかけに行くことをしません。これで接客業をやっているという事実に驚愕するかもしれませんが、まあなんにせよ自分は「カンファレンスのぬるま湯に浸かる8側の人間」9ということです。そんなわけで、発見が難しい自分を見つけて話しかけてくれた方には本当に感謝です。ありがとうございました。

おわりに

再度、発表を聞きに来てくれた方と、フィードバックをくれた方、懇親会などで話しかけてくれた方にお礼申し上げます。
発表のフィードバックだけではなく、発表中にハッシュタグ #techramen24conf に投稿された投稿はあとから見せていただきました。
後から発表を振り返ると、いろいろと至らぬ点があり、まだまだプレゼンや発表の構成に関する経験値が足りないなぁと思うところです。LT会とか勉強会的なところで何か発表をすることはあったのですが、こういったカンファレンスの場で発表をするというのは実は初めてで、想定通りに進んだ点、進まなかった点が多かったなぁという印象があります。また、こういったプログラマの会での発表構成とアカデミックな会で求められる発表構成は全く異なるものがあり10、双方の経験を積んでいければな思います。

どうやらtechRAMENは来年もあるらしいですし、またどこかで皆様にお会いできればと思います。それでは。


  1. まあ、自分の発表を好意的に捉えていない人は多分フィードバックコメントなんて書かないんですが… 

  2. 一般にはこのような行為を責任逃れというわけで、発表するならそれ相応の責任は持てるようになりたいものですね。 

  3. Androidアプリは古くはJavaアプリケーションで、最近はKotlinを用いて記述するようになりました。これポストには歴史の長いアプリからレガシーとなったJavaのソースファイルが消えたことを示しています。 

  4. この注釈は後から足しているのですが、記事を書き始めたときは適当に2000字ぐらいで終わらせるかと思ったらすでに4000字近く書いているという事実に驚愕しています。多分出来上がった記事はそれよりもっと文字が多いはずですが。 

  5. これが、今上げた理論の解釈として正しいものなのかという懸念はあります。おそらく誤って解釈していますが、若さゆえの過ちであると見守ってほしいです。 

  6. これについて同期からコメントをもらっていたのですが、当該のブログサイトが何故か500番台のエラーで落ちていました… 

  7. しかし、最近の悩みで、少し逆説的ですが、自分の行動が言語によって、それも自分が頻繁に使うような語彙によって制限されているようにも思えてならないのです。 

  8. なんか少し前にXでそういう言説あったよなと思って書いたのですが、原典を見つけられませんでした。あと、検索する途中に「懇親会で人と仲良くなってない人間何をしにカンファレンスに来たのかわからない」的な言説を見かけて二重にダメージを受けました。 

  9. 今回現役の未来大生として参加したのは自分以外に二人いたのですが、どちらの方も人と話すのが上手な方で、常にすごいな〜と思っています。 

  10. まあアカデミックな場で発表したこと一度もないですが。