WF-1000XM3というTWSがある。5年前の2019年7月13日に発売された当時としては超ハイエンドのワイヤレスイヤホンで、当時のSONYのフラッグシップモデルだった。
5年前の11月、これを買って、今でも使い続けている。

とはいえ、ワイヤレスイヤホンというのは精密機器で、使っていれば不調というのはいろいろ出てくるものだ。実際、イヤホン側の電池は40分くらいしか持たなくなってしまって、一度中国からバッテリーを輸入して交換している。いざ電池を交換してみれば確かにSONYの公称値くらいには電池が持つようになってあと3年くらいは使えるかなと思ってそこそこ満足していた。しかし、機械というものは前兆なく突然に壊れるものである。2024年5月31日、函館空港から中部国際空港に向かう飛行機の中で、WF-1000XM3のバッテリーケースは突然死してしまったのである。

症状

まず、バッテリーケースの電源が入らない。バッテリーケースの電源が入らないため、イヤホン側の電源も入らず、充電もされない。
次に、Type-Cの充電ケーブルを接続した際に、ケースのランプが30秒ほど点灯した後に消灯する。
このとき、SONYのHeadphone Connectではケース側のバッテリーは100%と表示されている。

また、ケースにイヤホンを収納した状態でType-Cケーブルを刺すとイヤホン自体には給電/充電できる。

所見

まずバッテリーの不良を疑う。これが本命。
次に開閉検知のセンサー。大穴でPCB。

分解

実際に中身を見てみないことにはわからないので開けてみる。
バラしたあとの写真しかないので、バラす過程は割愛。外側のマットな質感をした部分と内部のプラスチックケースは粘着テープでくっついているだけなので、細いヘラなどで開ける。ifixitとかで売ってるヘラがあるならそれを使うのが良いが、自分は普通に細めのマイナスドライバーで開けた。傷がつくのでそこまでおすすめはしない。

メイン基板には3つコネクタが刺さっており、2つは両耳のイヤホンへの給電+通信用。一つは謎基盤 (おそらくNFCや開閉検知、磁気系の制御を担っている基盤?)。それとは別に電池の±がはんだ付けされている。

プラスチックケース自体も分解可能で、充電ケースの赤色ランプを光らせるアクリルを取り除いた状態で充電ケースの前後を分けることができる。ここの固定は両面テープとツメ。外すのは力が必要で、つけるのはコツがいる。

ネジはそこまで多くなく、メイン基板をとめるネジが2本。ケースの前後をとめるネジが2本。一応ケースの開閉部分(フタ)も外せるっぽいがよくわからなかった。そこにも2本ネジがある。

全部分解した様子が下の写真

すべて分解した状態

メイン基板

バッテリーケース (後側)

充電ランプは点く

バッテリーの不具合であればバッテリー交換で治る可能性が高いが、その他の部品が破損している場合は交換部品が無いので、諦めるというか、新しいイヤホンを買うことになる。
ほとんどバッテリーの不具合だろうと思っていたが、どうにもバッテリーの不具合であるということの確証が取れずに、治ったら儲けものと思って交換用のケースバッテリーを購入した。

イヤホン用の電池は純正 (というかもともと入っていた物の新品) をAliExpressから購入したが、今回は普通にAmazonで交換用のバッテリーを購入した。

交換

なんか薬の箱みたいなのに入って届いた。ちょっと中国語フォント感がある漢字が良い。

箱

バッテリー本体

というわけでバッテリーを交換していくが、これがかなり難しい。 バッテリーケーブルがかなり硬いので、はんだ付けの際に固定するのも難しいし、なにより基盤というかバッテリーケースがズレるので、固定しやすいところではんだ付けするのが良いと思う。自分はマイクロファイバータオルを下に敷いてやった。もしくは、基盤をケースから外して、基盤とバッテリーをはんだ付けしてからケースを組み直すなどすると楽かもしれない。

そういえば、ケーブルをつける順番はプラス→マイナスにしておいた。車のバッテリーと同じ感じだ。

もう一つはんだ付けの話をしておくと、吸い取り線/吸い取り機を持っている人なら吸い取ってから新しいはんだでケーブルを付けたほうが良いと思う。持っていないならフラックスを塗ってからやったほうがいいし、コテ先は細めのほうが良いし、ランドもケーブル先端も細いし小さいのでコテ先をクリーニングしてからやったほうがよい。どれか欠けているならもう頑張るしか無い。自分は3つくらい欠けていた。

本当に苦戦したというか、あんまり人に見せられるはんだ付けではないので写真を上げること自体が恐縮なのだが、とりあえず交換できた。

一応テスターで導通を確認してみる。バッテリーのマイナス線とプラス線の両端にテスターの棒を当てて抵抗値を測定する。無限大が出たので一安心。
次に充電を試してみる。何かが間違っていた場合ここでバッテリーが発熱して爆発する。

とりあえず短時間の充電は問題なさそうだったので、実際に満タンになるまで充電してみる。いろいろ試してみたら大学に行く時間になってしまったので大学に持っていってそのまま充電することにした。無人の家で発火されるより、人が複数人いたとしても消火活動にすぐに当たれる場所で充電するのが好ましいと思った。1 2

おわり

というわけで、交換して使ってみているが不調が完全に消えたので、今回のバッテリーケースの不調はバッテリーの不調だったことになる。ワイヤレスイヤホンを新しく買うならまあ大体1〜2万円くらいの物を買うと思うが、今回買ったバッテリーは3000円くらいだったので儲けものだった。とはいえ、分解してバッテリー外して交換して…という手間を考えると手放しに勧められはしない。最悪発火する可能性もある作業だし、イヤホン側の電池交換とは作業の難易度が桁違いである。 3

まあ今回は無事に修理ができたので、あと3年くらいはこのワイヤレスイヤホンに頑張ってもらうつもりである。


  1. という話をしたら友人3人くらいに「お前ヤバイよ」と言われた。別に人を防護壁にしたり消火活動をさせようなんて一言も言っていないのに! 

  2. ところで、火災のときは酸素供給を断つというのが定石であると思うが、リチウムイオン電池は普通に酸素供給を断っても内部で燃えるので事前に消化器の位置を確認しておくと良い。万一爆発した際にすぐに消化器を持ってくるためである。 

  3. イヤホン側の電池は小さなネジやフラットケーブルさえあれど、ボタン電池なので裏表を間違えなければ開けて、取って、はめて、閉めるだけである。イヤホンもマイナスドライバーでツメを開けられるので専用工具なども必要ない。