今からおよそ6年前、中学2年生の頃、年齢に合わない買い物をした。ATH-MSR7という2014年11月発売のヘッドホンである。買ったのが6年前、確かあれは冬のことだったので、2017年の1月か2月くらいだと思う。

購入価格は確か2~3万ほど。今考えるとまあ高いがヘッドホンとしてはそれくらいかというレベル。しかし、中学2年生の財布には痛手だった。それでも僕は当時インターネット上で噂になっていたハイレゾオーディオなるものを体感したかったのだ。

それからというもの、こいつにどれくらいお世話になったかはわからない。まだ実家に居た頃、スピーカーで音楽を聴いたりゲームをすることは少なかったので、PCを使う時間 = ヘッドホンをつけている時間と捉えてもよかった。とすると、当時は毎日4~6時間をPCゲームに費やしていたので一週間で平均34時間ぐらいはヘッドホンをつけていたことになる。高校に入ってからは登下校のときに音楽を聴くためにこいつを学校に持ち込んだこともあった。SUSHIBOYSのDRUGという曲に

イヤホンに耳刺してるんじゃないかってくらいこいつにフィールして気が付けば予想にない未来

という歌詞があるが、あのときの自分は確実に頭にヘッドホンをつけていたのではなくて、ヘッドホンに頭をつけていた。

しかし、ヘッドホンは実態を持つ物である工業製品である以上、使っているうちにいろいろなところがヘタってくる。自分の場合最初にヘタったところはイヤーパッドだった。高校1年生の自分にとってヘッドホンの新品を買うお金はなかったため、イヤーパッドを交換することにした。実はイヤーパッドくらいならインターネットで互換品を買うことができる。

そうして使っているうちに今度はヘッドバンドがヘタってきた。イヤーパッドもヘッドバンドも合皮でカバーされているので、その合皮が剥がれ落ちてくるのだ。今度は本当にお金がなかっため、なんとティッシュペーパーをヘッドバンド部分にぐるぐる巻にしてセロテープとガムテープで固定した。せめて布をつかうとかいろいろあったと思うのだが、その当時家にかなりの長さ残っていた布はアンパンマンの布くらいしかなかったのでやむを得なかった。そんな惨めな作業の途中、自分はこう決意したのだ。「壊れたら今度こそこいつを新品のヘッドホンと替えよう」と。

お察しの通り、自分は未だにこいつを使っている。なんなら、替える気もなかった。札幌から函館への引っ越しをするときの車内で、自分はこいつで音楽を聴いていた。しかし、前回のイヤーパッド交換から4年、ヘッドバンドをティッシュペーパーでぐるぐる巻にしてから3年という月日が経っている。イヤーパッドの合皮はまたも剥がれ落ち、ティッシュペーパーは自分の頭と接する部分からボソボソと破れたり千切れたりしている。その現物がこの画像の通りなのだが、まあ結構ボロボロである。これはもう替えてもいいだろう!と自分すら思った。しかし大学2年の自分の財布には新品のヘッドホンを買う金は…

…いや、嘘だ。正直、今なら4万円くらいのヘッドホンならポンと買えるくらいの貯金が口座にある。なんなら今は収入が103万を超えそうになって慌ててアルバイトのシフトを調整しているくらいである。じゃあその収入はどうなったかというと、度重なるKindleセールやdlsiteのセール、そして音ゲーなどによってたちまち口座から姿を消していた。「お前がセールにかこつけて情報をただ消費するだけの怪異にならなければ、今お前の手元には化粧箱に包まれた新品のヘッドホンが手元にあったのだぞ」と自分を妬みながらAmazonの買い物かごに替えのイヤーパッドとヘッドバンドカバーを入れた…。


届いたものは以下の通り。早速作業を進めていくことにする。

まずヘッドバンドに巻かれたティッシュペーパーを取り外す。流石に3年間巻かれ続けただけあって、結構キツく留めてあった。外すと、改めて酷い状態のヘッドバンドが現れる。当初はこのままヘッドバンドカバーを付けようと思っていたが、作業中においてもボロボロと合皮が落ちてきたために、合皮をすべて剥いでしまうことにした。頭につけるだけでボロボロと落ちてくる合皮は手で適当に擦るだけで簡単に剥がせる(下の写真に写っている、机に落ちた黒い粒のようなものが剥がれ落ちた合皮である)。

すべて剥ぎ終わったら、カバーを取り付ける。ファスナーなので、ファスナーをヘッドバンドの外側に合わせて閉じる。最初は「え、この幅でヘッドバンド覆えるのか」と思ったが、いざファスナーを締めてみたらピッタリだった。長さに関してはつけるヘッドホンによって余ったり少し足りなかったりする(といっても合皮部分が見えるわけではなく、金属部が見えるくらい)らしい。ATH-MSR7に関しては金属部を覆う形でピッタリの長さだった。

次にイヤーパッドを交換する。こいつは実際にはただカバーみたいな感じでくっついているだけなので外すのは割と簡単だったりする。これでも3年前に同じ作業をしているのでどうすれば良いかはわかる。一応交換用パーツに交換用のツールが付いているのだが、今回は使わなかった。多分説明書みたいなものも付いていた気がする(例によって読んでいない)ので、必要とあらば読むと良いだろう。

ということで一連の作業を経て、また新品同様に生まれ変わったヘッドホンがこちらである。

こうしてみると、イヤーパッドの経年劣化というものは相当激しいものである。単純につけた時間に依存するのはもちろん、夏の間もつけていたので、汗だったりの要因もあるのだろうが、やはり定期的に交換する必要があるということを改めて実感した。

そしてまた改めて決意するのである。「次壊れたら替えよう…」と。